ラッパー

般若さん

『ウルトラジャンプ』30周年を記念してラッパーの般若さんにインタビュー。『ジョジョ』シリーズを始め、ジャンプ作品が大好きという般若さんに、『天草四郎は救いたい』『バイオーグ・トリニティ』『ジョジョの奇妙な冒険 第9部 The JOJOLands』の3作品を読んでいただき、感想を伺いました。インタビュー当日は、なんと私物の『The JOJOLands』のTシャツを持参していただきました!

はじめに

Q

―― 自己紹介をお願いします。

般若般若です。音楽や役者をやっています。よろしくお願いします。

『天草四郎は救いたい』について

Q

―― まずは作品を読んだ印象についてお聞かせください。

般若登場人物が全員美形で驚きましたね(笑)。日生(ひなせ)や彼の兄の告(つぐる)、そして天草四郎も、とにかくみんな可愛いしイケメン。舞台設定は現代の、いわゆる転生ものですけど、可愛らしい絵柄でエッジの効いたことをやるっていう、ギャップが面白いと思いました。細かいギャグも笑えましたね。

Q

―― 気に入ったキャラクターは誰でしょうか? その理由もお聞かせください。

般若弟の日生ですね。天草四郎にとっては舎弟でもありつつ、告に対しては前に出てくる。いいバランスを取っていて、彼がいることで物語がうまく回っていると感じました。天草と告だけだと、トラブルが起きて終わりそうなところを、彼が和らげている。昔あった『カメレオン』という漫画の矢沢と坂本の関係性に似ている気がしました。

Q

―― 一番印象に残ったシーンはどこだったでしょうか? その理由もお聞かせください。

般若公園でおじいちゃんが立つシーンですね。あそこから一気に面白くなってきた感じがありました。掛け合いのテンポも良くて、「黙れ異教徒!」とか、普段絶対使わない言葉をゴリ押しする感じが面白かったですね。

Q

―― インフルエンサーである天草四郎時貞の配信の模様を描いたコマ割が特徴的ですが、配信の演出やコマ割についてはどのような印象を持たれましたか?

般若本当に配信を見ているかのような臨場感があって、斬新だなと思いました。YouTubeの世界観をそのまま漫画に落とし込んでいて、今の読者にも分かりやすく伝わる演出だと思います。トラブルやコメントの反応も含めて、ライブ感がしっかり出ていました。

Q

―― YouTubeの登録者のコメントに一喜一憂してしまう天草四郎時貞ですが、共感できる部分やこれまでにあったファンの方々の反応で印象に残っているものがあれば教えてください。

般若僕はあまりコメントに振り回されないタイプですね。悪いことを書かれても「まあそういう意見もあるだろう」って受け流しますし、逆に褒められると不安になるタイプなんです(笑)。良いことを言われると「この後悪いことが起きるんじゃないか」と思ってしまうんです。

Q

―― マネージャーの告は、毎回配信のたびに登録者を増やそうと様々なことを考えていますが、般若さんはライブや楽曲を作成する時に心がけていることはありますか?

般若あまり手を広げすぎないことです。僕自身、器用なタイプではないので、自分ができる範囲のことをしっかりやる。音楽、役者業、そしてちょっとしたアパレルくらい。基本は自分が責任を持ってできることだけに集中しています。ライブに関しては凄く考えます。僕が呼ばれて行くライブとワンマンではやり方が全然違うので。自分のワンマンだと、今、二世代のお客さんがきてくれているんです。子どもも来るんですけど、昔からのファンに向けて古い曲も織り交ぜて「来てよかった」と思ってもらいたいなっていう気持ちでやってますね。

Q

―― この作品では現代に天草四郎時貞が現れますが、もし過去の偉人に会えるとしたら誰に会いたいですか? 会えたらどのようなことをしたいですか?

般若そこまで強く「会いたい!」と思う人はいないんですよね。ミュージシャンならジャニス・ジョプリンとか尾崎豊とか、ちょっと興味はあります。でも、歴史の偉人って本当のところはわからないし、会った瞬間に斬られるかもしれないじゃないですか(笑)。だから夢としてはあっても、現実的にはあまり求めてないかもしれません。

Q

―― この作品を人に薦める時に、ぜひ観てほしいポイントはどこでしょうか?

般若疲れている人におすすめしたいです。力が抜けるし、読み終えるとどうでもいいことが本当にどうでもよくなる(笑)。でも、所々深いことも描いてあるので、軽く読めて実は奥行きのある作品ですね。

『バイオーグ・トリニティ』について

Q

―― 作品を読んだ印象についてお聞かせください。

般若非常に独特で、読み応えのある作品だと感じました。率直に言えば、難解な部分も多く、物語が進んでいるのか停滞しているのか一瞬分からなくなる場面もありました。ただ、それがこの作品の魅力でもあって、世界に入り込むまでに少し心の準備は必要だと思います。そのぶん、読み進めるほどに引き込まれていく面白さがありました。

Q

―― 気に入ったキャラクターは誰でしょうか? その理由もあわせて教えてください。

般若極子(キワコ)ですね。主人公のふたりに比べて、人間らしく、素直でいじらしいところが印象的でした。複雑な物語の中で、彼女の考え方はシンプルで、読者目線に近い存在だと思います。

Q

―― 一番印象に残ったシーンはどこでしたか? その理由も教えていただけますか。

般若煙草のマルボロが好きなんですけど、5巻に登場したマルボロが刀で穂坂(ホサ)と戦うシーンは格好いいなと思いましたね。また、「芙三歩のことが好きすぎて辛い」と2ページを使って描かれた場面も強く印象に残っています。全体的に名言や印象的なセリフが多い作品なので、そうした言葉の積み重ねを記憶していますね。

Q

―― 大暮維人先生の美しく圧倒的な絵が魅力的ですが、ビジュアル面ではどのような印象を持たれましたか?

般若とにかく細密で、迫力のある絵だと思いました。見開きの大ゴマには何度も目を奪われましたし、美しいだけでなく、痛々しさやグロテスクな表現も鋭く描かれている。そのコントラストが非常に印象的でした。

Q

―― 舞城王太郎先生による唯一無二の世界観も魅力ですが、『バイオーグ・トリニティ』の世界についてはどのような印象を持たれましたか?

般若壮大でありながら、どこか孤独さを感じる世界でした。ゼロか百かの極端な要素が多く、突然、戦争が始まったり、死んだと思ったキャラクターが再び現れたりと、予測不能な展開が続きます。人の死の扱いも独特で、そこに独自の価値観があると感じました。

Q

―― 極子のバイクや穂坂の武器・装備など、メカニックの描写もとても格好いいですが、特に印象に残っているものはありますか?

般若メカに詳しいわけではありませんが、素人目線でも武器や重機の描写は圧巻でした。特にマルボロの刀やバイクが印象深かったです。破壊されていく巨大なものの描写も圧倒的で、作者の描き込みの凄さを感じました。

Q

―― 「バイオ・バグ」と呼ばれる手の穴から物質を吸い込むことで融合できるバグラーたちが登場しますが、もし何かを吸い込むとしたら、何を吸い込んでどんな姿になってみたいですか?

般若考えた結果、なぜかテイラー・スウィフトが浮かびました(笑)。外見はテイラー・スウィフトで、中身は自分というギャップが面白いなと。他にも東京タワーや身近なものも考えましたが、エンターテインメントとして一番面白そうだと思いました。

Q

―― 最後に、この作品を人に薦めるとしたら、ぜひ注目してほしいポイントはどこでしょうか?

般若恋愛要素が作品の根幹にあるところですね。グロテスクな描写や戦闘シーンも多いですが、その中心には「愛」や「人を想う気持ち」という純粋なテーマがある。そこがぶれていないからこそ、カオスな世界観の中でも物語として成立していると感じました。

『ジョジョの奇妙な冒険 第9部
The JOJOLands』について

Q

―― 作品を読んだ印象についてお聞かせください。

般若一話を読んだときに「これは第5部(『ジョジョの奇妙な冒険 第5部 黄金の風』)に近いな」と思いました。舞台がハワイというのも意外でしたし、ワクワク感がすごかったですね。正直、前作の第8部(『ジョジョの奇妙な冒険 第8部 ジョジョリオン』)は12年読むのを我慢して一気に読み切ったので(笑)、今回の第9部は最初から期待していたんです。まだスタンドの能力自体はそこまで強くないと思ってますが、チームとして動いたときに力を発揮する感じがします。

Q

―― 主人公のジョディオはお金を稼ぐために行動をしており、いわば「アウトロー」と言えます。そんなジョディオが成長していく姿を本作では描いていますが、アウトローだからこそ感じる魅力はありますか?

般若荒木先生が描くアウトローって、ただのチンピラじゃないんですよ。全員、信念がある。ジョディオもそうだし、兄のドラゴナもそう。今回、主人公が兄弟っていうのはシリーズ初ですよね。割り切って「これは仕事だから、金のためだから」っていうスタンスも面白いし、その先に絆がどう変わっていくのか、期待しています。

Q

―― 気に入ったキャラクターは誰でしょうか? その理由もお聞かせください。

般若ジョディオですね。冷静で腹が据わっているし、仲間思いなところもある。第5部のブチャラティに近い立ち位置というか、「やるべきことはやる、捨てるべきものは捨てる」っていう考え方が好きです。

Q

―― 荒木先生が描くキャラクターたちは、その独特なファッションも魅力のひとつですが、ファッションやビジュアル面で印象に残っていることを教えてください。

般若第5部以降は特に、デザインが独特ですよね。今回も「これ日本で着てたら職質されるでしょ」みたいな服ばっかり(笑)。ドラゴナの服もそうですし、帽子が頭と一体化しているようなキャラもいて、最近は何を参考にしているのかもわからないくらい。でも、そこが荒木作品の魅力だと思います。

Q

―― 印象に残ったシーンはどこでしょうか? その理由もお聞かせください。

般若やっぱり第2話の岸辺露伴の登場シーンですね。露伴が登場するのはずるいですよ(笑)。あれで一気に読者を引き込みに来てるなって思いました。あと、第1話の冒頭のこれまでに登場したスタンドたちが並ぶあのページ、歴代ファンなら誰でも期待しちゃいますよね。

Q

―― 漫画の中に度々登場する「仕組み(メカニズム)」という言葉がありますが、般若さんがこれは「仕組み(メカニズム)」だなと感じることは何ですか?

般若荒木先生って、生きていること自体の仕組みに疑問を持たせてくれると思います。僕自身も、以前東南アジアに行ったときに、何が本当の豊かさなのかを考えさせられました。高級ブランドを持つことが幸せだと思い込まされている一方で、サッカーボールひとつで遊び続ける子どもたちがいる。どっちが正しいとかじゃなくて、それぞれの仕組みの中で生きているんですよね。でも、その仕組みに疑問を持って生きることが大事なんだと思います。

Q

―― もしスタンドを使えるとしたら、どのようなスタンド(能力)が欲しいですか?

般若第6部(『ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーンオーシャン』)に登場したウェザー・リポートのスタンド(ウェザー・リポート)ですね。今の異常気象をどうにかしたいし、米とか野菜とか、作物を守れる力が欲しい。あとは第4部(『ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない』)に登場した重ちーのスタンド(ハーヴェスト)も最強だと思っています。勝手に色々なものを集めてきてくれるって、便利すぎますよね(笑)。

Q

―― この作品を人に薦める時に、ぜひ観てほしいポイントはどこでしょうか?

般若これから起業したいとか、一歩踏み出したい人に薦めたいです。『ジョジョ』って基本的に、主人公たちが「やるしかない」って状況で前に進む話が多いじゃないですか。特にこの『The JOJOLands』は、そういう後押しをしてくれる作品だと思います。

最後に

Q

―― 『ウルトラジャンプ』30周年について、コメントをお願いします。

般若『ウルトラジャンプ』30周年、本当におめでとうございます。今回こうしてお話をいただけたことが、とても嬉しいです。実はこのインタビューを受けた翌日に、自分のアルバムが発売されるのですが、それよりも嬉しいくらいで(笑)。役者として主演をいただいたときよりも、このように集英社さんでお話ができることが本当に光栄です。これは僕個人の思いでもあり、周りの仲間たちの声でもあります。これからも素晴らしい作品を届けてくださることを心より期待しています。

ラッパー

般若 さん

Profile

ラッパー

般若 さん

HIPHOP界を代表する存在。俳優としても活躍し、様々なドラマ、映画に出演中。2019年には、日本武道館で初のワンマンライブ「おはよう武道館」を成功させた。